(時事)民事執行法改正 養育費の不払い防止へ

2016-09-30

(時事)民事執行法改正 養育費の不払い防止へ

2016年9月13日の日本経済新聞に,法務省が民事裁判の支払義務を果たさない債務者の預金口座情報を,裁判所が銀行などに照会できる制度の検討を始めたとの記事が掲載されていました。法相が,民事執行法の見直しを法制審議会(法相の諮問機関)に諮問し,2018年度以降の法改正を目指す予定です。

例えば,あなたが借金を返してもらえないとき,最終的に民事裁判で返済を求めることになります。債権者の権利を認める判決が出れば,債務者は自発的に払うことも少なくありませんが,判決を無視して支払わない人もいます。そこで,国家権力によって,債務者からの支払いを強制的に実現するための強制執行という制度が用意されています。権利の確定は民事訴訟法で,権利の実現は民事執行法で定められているのです。

現行制度では,「債務者の銀行口座がA銀行B支店にあり,財産を持っているから,強制執行して下さい」というように,債務者の口座がある金融機関の支店名まで,債権者が自分で特定した上で,裁判所に申し立てをしなければなりません。債権者が,債務者が持っている財産を自分で探す必要があるのです。2003年の民事執行法改正により創設された財産開示手続制度により,債務者本人に情報開示を求める制度はありますが,実効性に疑問が持たれています。

そこで,法務省は,債務者の個人情報保護に留意しつつ,債務者が口座を持っている可能性のある銀行に対し,裁判所が情報開示を要請する制度を検討することになったのです。債務者が,虚偽の説明をした場合に対する罰則の強化も検討されています。

上記制度が実現すれば,債権回収の場面で実効性が期待されます。日本弁護士連合会の2008年の調査によると,確定判決を得ながらも債権を回収できなかったことがある弁護士は,全体の8割もいたそうです
また,この制度は,離婚後に元の配偶者から,養育費の不払いがある場合にも役立つと期待されています。現状,養育費の不払いは横行しており,厚生労働省の2011年の調査によると,母子家庭の約4割が養育費の取り決めをしているが,その約半数しか実際に受け取られていないそうです。養育費の不払いは,離婚した家庭や当事者間だけの問題ではなく,一人親世帯の貧困問題にも繋がります。また,医療費や年金等の社会保障費の上昇が年々続いていますが,本来債務者が支払うべき債務の未払いへの手当てを,社会保障等の国の税金を充てることの是非もあるでしょう。
上記制度の実現により,これら不払いの抑止が期待されます。