遺産相続について新しい制度の運用開始が発表されました

2016-07-13

遺産相続について新しい制度の運用開始が発表されました

【質問】
遺産相続は,手続きが大変で時間もかかると,本で読んだことがあります。改正により,手続方法が変わると聞きましたが,どのように変更されるのでしょうか。

【回答】
 7月5日の日本経済新聞に,法務省が2017年度の春から,遺産相続の手続を簡素化する制度の運用を開始することを発表したとの記事が掲載されていました。今年度中に,不動産登記規則が改正される見込みとのことです。

 遺産相続の手続について,少し解説します。遺産相続(相続)は,被相続人が亡くなったことにより開始します(民法882条)。現行制度では,相続人は被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本など,相続に必要な書類を集める必要があります。そして,集めた書類を法務局や金融機関に提出します。もし,被相続人の不動産が各地にあったり,預貯金が複数の金融機関にあった場合には,それぞれ申請するたびに大量の必要書類を持参しなければいけませんでした。また,提出書類に不備があったときには,再提出をしなくてはならず,手続が遅れました。金融機関の側にとっても,審査する内容は同じでも,1人の被相続人について,各金融機関が別々に確認しなくてはならないため,コスト面での無駄もありました。このように,今までの遺産相続制度は煩雑で,相続人始め,関係機関に大変負担を課すものでした。

 今回の改正による新しい制度では,最初に相続人が被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍を集めて,法務局に提出すると,証明書が発行されるので,それを金融機関等に提出することにより,手続きが可能となりました。もし,各地に不動産を所有していた場合や,複数の金融機関に預貯金を所有していた場合でも,最初に申請する法務局で証明書を発行してもらえば,次回からはその証明書のみで,別の法務局や金融機関で申請できます。今回の制度改正により,相続人の負担が軽減され,多少便利になると思われます。

 ただし,今回の制度改正によっても,まだ改善が望ましい点は残っています。例えば,遺産相続手続きの最初の段階である,被相続人の全ての戸籍を集めるという作業です。そして,煩雑な制度が,簡素化され便利になることによって,制度の運営においてはリスクも生じ得ます。例えば,今回の制度と相似点のある,証明書で各種行政手続き等が一括化されたマイナンバー制度をとっても,情報漏洩や紛失によるトラブルへの対策は講じられています。
 
遺産相続の手続きにおける法改正によって,相続人や各種関係機関など直接的な当事者を始めとして,膨大な社会的コストを減らすという制度の本来の目的が果たされるため正確な制度運用がなされるよう,今後の動向に期待したいと思います。